【葉身分析センターより 2014年8月30日】 夏の終わり・・・? いや、まだちょっと早いようです。

〔このブログは、東洋グリーン葉身分析をご利用のお客様に8月30日にお送りした『傾向と対策』・『葉身分析Weekly!』を、再構成したものです〕

 

【葉身分析センターより 2014年8月30日】 夏の終わり・・・? いや、まだちょっと早いようです。

東京では8月下旬からは太平洋高気圧が弱って大陸の冷たい空気が張り出し、今日はまるで秋雨のような雨です。 日平均気温の推移(下図)を見ても、ここ数日はめっきり温度が下がっています。

東京の日平均気温7-10月(2013・2014・平年値)

しかしまだまだ、油断はできません。 特にこの時期は、ベントの体内状態も急激に変化するので、注意が必要です。

夏の間に必死に耐えていたベントが、涼しくなって最初にすることは、夏に破壊された光合成能力の修復です。 残っている炭水化物をつぎ込んで、新しい葉を作ったり、葉の中のクロロフィルや光合成関連酵素タンパクを作り足したり。 「ともかく早く稼ぎ手を復活させよう」と言うわけです。

残っている養分の全てをつぎ込むため、貯蔵炭水化物であるフルクタンが夏よりも減って、一時的にゼロになる、という現象が見られることもあります。 そして光合成能力が上がって炭水化物に余裕が出てくると、次にそれを使って根の再生を行ないます。 フルクタンの本格的な回復が始まるのは、この根の再生が一段落ついてから、というのが典型的なパターンです。

もしもこの「貯金のすべてを回復につぎ込んで葉の回復を図っている」ときに、機械的損傷(軸刈りなど)や病害が発生してしまうと、そこから回復するための貯蔵炭水化物が無いため、非常に重い症状になり、回復にも時間がかかります。

また、新しく芽吹いたばかりの葉は、まだ柔らかく、汁液が多い状態です。 これは病原菌にとっては侵入しやすく、栄養豊かなジュースがたくさんある、という願ってもない状態。 さらに刈込などにともなう機械的損傷も起こりやすい状態です。

そしてもし暑さがぶり返すと、若くて弱い葉+機能が低く短い根+低い貯蔵炭水化物で、大きな障害が出ることがあります。

またこの時期に陥りがちな落とし穴が、回復が始まったのを喜ぶ余り、過剰に窒素を入れたり、強すぎる更新作業を入れてしまう、というミスです。 夏の間ぐったりしていたベントが回復しはじめて、でもなかなか密度は上がってこない、そこで少しでも刺激したくて肥料や穴あけをしてしまう、という気持ちはよくわかるのですが、まだ体内の炭水化物レベルが低い状態では、与えた無機窒素はスムーズにはアミノ酸・葉緑素・タンパク質にはなりません。 炭水化物の余裕が少ないと、細胞壁のセルロースも作れず、しっかりした葉を伸ばすこともできません。 その結果、与えた窒素が葉の中に「糞詰り」状態で溜まって、葉の窒素含量が過剰に高くなり、軟弱徒長してリスクをさらに増大させる。 更新作業も、機械的損傷から回復する余力が無い状態では、大きなダメージを与えてしまう。 そんな危険があるのが、この「炭水化物が底を打っている時期」です。

この「夏のダメージからの回復が始まる時期」が、『ベントグリーンを夏越しさせる9つのステップ』の「夏」の次の、STEP6「初秋」です。 例年ですと、その時期は関東・近畿の平野部では9月の第1週あたりですが、今年は8月下旬の涼しさで、これがもう始まっているようなところも散見されます。 しかしこの涼しさが一時的なもので9月の上旬に暑さがぶり返せば、本格的に「初秋」の状態になるのは、まだ先のことかも知れません。

というわけで、今回はまだ目標値の「初秋」への切り替えは行なわず、夏の警戒態勢を続けたいと思います。 今しばらくは、夏の「守りの管理」を続けながら、注意深くベントの変化を観察し、対応してください。

(追記:9月12日付で葉身分析目標値を「初秋」に切り替えました)

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